王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「ならん」
「なぜですっ?!」
「ユリエが誘拐された可能性があるとしても証拠は現時点ではない。それで兵は動かせない」
「く……っ!」

 証拠がない以上不用意に隣国に兵を送ったり、交渉ができないことを告げられると、ユリウスは歯がゆい気持ちで拳を握り締める。

(すぐに助けにいけないなんて……)

 ユリウスはその足で裏庭にある『聖樹サクラ』の木のもとへと向かった──
< 75 / 167 >

この作品をシェア

pagetop