王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「まったく、伝承の通りやはりまた裏切ったんでしょうな。今度はクリシュト国を裏切って我らに乗り換えるとは、あさましい」
「ち、ちがいます!」

 やっぱり『聖女』そのものがみんな憎いんだ。
 こうして彼と話しているときも、遠巻きにみんなひそひそと話しながら私に視線を向ける。
 その視線はとても歓迎するようなムードではない。

 結構精神的に堪えるかも……。

「皆、それ以上言うと俺が許さない」
「レ、レオ様!」

 廊下にいた者もそして大階段の広間にいた者も、皆揃って跪く。
 曲がりなりにもやっぱり彼はこの国の第一王子なんだと気づかされる。
 すると、突然私の視界がぐらっと揺れて気づいたら彼の腕の中にいた。
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