王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 レオの言葉が効いたのか、王宮では陰口もほとんど言われなくなったし過ごしやすくなった。
 それよりもなんだか王宮の外が騒がしいような気がして、私はそっちのほうが気になっていた。

「ディアナ?」
「なんでしょうか、ユリエ様」

 相変わらず可愛らしいお人形さんのような幼い見た目の彼女は、私にメイド服の裾をもってちょこんと挨拶をする。

「外がなんだか騒がしい気がするんですが、今日は何かの日ですか?」
「今日は『魔法祭』でございます」
「まほうまつり?」
「はい、この国の魔法に関する歴史を忘れないようにするための一年に一度のお祭りです」

 なにそれ、もしかしたらお祭りだからヒントはないかもだけど、何かあるかも?

「ありがとうございます」

 私はその足でこっそりと街へ出てみることにした。
 王宮の外への許可はもらってないから、カーテンを使って窓から降りてそこから変装して門を通って出た。
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