王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「聖女なんかいなくなれ!」
「お前のせいで魔法はなくなったんだ!」

 まずい……。
 これだけの人数から逃げられる方法は何かない?!

 まわりを見渡しても人、人、人。
 道の真ん中だから何もないし、元来た道も隠れる場所なんてないし……。

「──っ!」

 目のあたりにあたった石で傷ついたのか、目尻と頬に血が流れる。
 どうしよう、走って逃げるしか……。


「やめろ」


 考えを巡らせる私の耳に低い声が届くと、急に優しく抱き寄せられた。
 私はその感触に覚えがあった──

「レオ……様……」
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