王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「毒見しましょうか?」

 こっそりとレオの耳元で私は呟くが、その言葉を鼻で笑う。

「うちの国の人間がなんか入れるわけねーだろ。大丈夫だよ」
「でも」
「一応近くから護衛が見てる」
「──っ!」

 気づかなかった……。
 周りをそーっと見渡すけど、全然どこにいるかわからない。
 ほんとにいるの?

「お、お待たせいたしました。いちごバナナクレープでございます」
「ああ、これ」
「──っ! ありがとうございます!」

 お金を渡したレオはクレープを受け取ると、食べ始める、と思いきや私の方に差し出してきた。
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