王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「どうしたの?」

 その言葉に何も言わずに、レオは私の目元を拭った。

「──っ!」
「そんなに辛かったか? 聖女として非難されたのが」

 それを言われて初めて自分が涙を流していたことに気づいた。

「違うの! その、クレープって私の国にもあって、そっくりだったから思い出して、その……」
「恋しくなったか?」
「はい……」

 レオはすぐそばにあったベンチに座ると、横に座るように促してくる。
 私も同じように腰かけると、レオは向こうのほうを見ながら話し始める。

「元々世界には魔法があふれていた」
「え?」
「今でこそ魔術師とごく一部の人間になったが、普通に皆魔法が使えてたそうだ。だがやがて魔法は廃れて、魔法を使う者も減っていった。やがて生き残った魔法使いたちが自分たちの国を作った。それがコーデリア国だ」
「魔法使いの生き残り……」
「もうこの国でも魔法が使えるのはごく一部の魔術師のみだ。皆は魔法の恩恵を忘れないよう、そしてこの国のはじまりを忘れないようにとできた祭が『コーデリア国魔法祭』だ」
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