王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 クレープを急いで食べるように私に促すと、また手を取って屋台の方に連れて行ってくれる。
 ああ、なんかこの人は口は悪いけど優しい人なんだな。
 感覚的だけどそんな感じがする。
 ほら、こうやって屋台にある自分の国の名産とか珍しいものとかいろいろ説明してくれる。

 自然と私も笑っちゃうじゃない……。
 レオはこの国がすごい好きなんだな。

 何か事情があって私をここに連れてきたのかもしれない。
 それを話してくれるまで待とう。
 そして、私は自分のことを知る。

 私は彼の子供のようにあどけない笑顔を見てそう思った──
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