「ひきこもり王子」に再婚したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、仰せのままに従うことにしました
 一瞬、抱き寄せられるのかとドキッとした。こんなときなのに。お兄様の話に衝撃を受けているというのに。

 彼と見つめ合う。

 彼の瞳に映っている自分が怯えているように見える。

 それがお兄様のことに対してか、あるいは彼に対してかはわからない。

 彼の手に力がこもった気がした。が、結局、彼はわたしを抱き寄せなかった。
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