「ひきこもり王子」に再婚したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、仰せのままに従うことにしました
 彼と夫婦だったときには、仮面夫婦とか偽装結婚どころかまーったく接点がなかった。だから、ここまで愚かでバカだとは気付きようもなかった。

「お兄様、お願いよ。どうかわたしだけでも、わたしだけでも見逃して」

 お姉様は、いきなり両膝を床につけて懇願しはじめた。

 クロードとわたしのもとにやって来たのも、お姉様がわたしたちが遠く辺境の地にいることを思い出したに違いない。ここまで来たら、なんとかなるとでもかんがえついたのね。だからこそ、マリユスのお尻を叩いて連れてきた。

 マリユス一人だったら、ポケーッとしている間に捕まっていたはず。

 そんなお姉様の懇願も、いまだクロードと睨み合っているお兄様には届かないらしい。
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