「ひきこもり王子」に再婚したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、仰せのままに従うことにしました
 そういえば、林でクロードにお兄様のことを話したとき、彼ったらすごく怒っていたっけ。

 その瞬間、唐突に脳裏に記憶が蘇った。

 それこそ、その光景がパッと現れたのである。

「お兄様……」

 自分でもコロコロとかわる感情をうまく制御出来ない。

 一瞬にして、懐かしいほんわかした気持ちが恐怖に塗り替えられてしまった。

 無意識の内に立ち上がろうと腰を浮かしていた。

 よろめきつつも完全に立ち上がるという瞬間、お兄様の左手がわたしの右手首をつかんだ。
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