わたしのスパダリな婚約者
◇そう、なのですか?
新入生のあれやこれやもひと段落、かと思えば卒業式に関してドタバタし始めたけれどすでに新しい生徒会に引き継ぎをし終えたため時間的にも余裕ができたらしい婚約者と約束をしていたのだけど。
「…………あら」
クリス様と……一緒にいるのは確か生徒会で同じだった一学年下の伯爵令嬢ではなかっただろうか。まぁその2人が一緒にいること自体はおかしいことではない。
しかして令嬢の方が顔を赤く染めて手紙を渡しているところを見るとおや?と思うわけだ。クリス様の表情はよく見えないけれどあんなに可憐な、しかも生徒会に入れるような才女の方から思いを告げられるのは同性であるわたしからしてもドキドキしてしまう。
こう言う場面を見るのは初めてではないし、耳に入ることもよくある。だってクリス様ですもの、むしろあんなにキラキラした素敵な御仁が他の令嬢からもてはやされないはずがない。
婚約者がいるというのはクリス様は別段隠していないし相手方も恐らく知っているのだろうけど、いかんせんその婚約者がなんの特徴もないような平凡な子爵令嬢だもの。それなら自分でも、と思うのは当然だ。
クリス様の家であるパスカート家もそこまで高位の貴族というわけではないけれど古くからある家のひとつで、ご先祖様には王家も嫁がれたこともある由緒正しい家柄だ。
それだけ優秀で有能で、しかも見目麗しい性格も良い男性となったら婚約者云々に関わらず憧れや恋心を持つ方が現れても当然としか思えない。