わたしのスパダリな婚約者
◇……………へ
それから何があったわけでもなく日々は穏やかに過ぎていった。ただ少し…ほんの少しずつクリス様の遠慮がなくなって来ているような…ないような……?
わたしとしてもどう言えばいいのかわからなかったのでシエタに相談してみたけれど、シエタから見たクリス様は何も変わっていないらしい。わたしの気のせいだったのかしら。
「お時間をいただいて申し訳ありません」
「いえ、お気になさらないで下さい」
本当なら今日は学園が終わったらすぐに家に帰って準備していた果物でジャムやコンポートを作る予定だったけれど、まぁ差し迫った用事というわけではなかったので後日に回しても問題はない。
それに、と目の前で固い表情で座っている見覚えのある可憐な少女を蔑ろにするのは心が痛む。ものすごく勇気を出して声をかけてくれたのは一目瞭然だったし。
「改めて、わたくしパスカート先輩と同じ生徒会に所属しておりましたメルティ・ナナ・シルディクトと申します」
「存じておりますわ。シルディクト様はわたしたちの間でも優秀な方だと有名ですもの」