わたしのスパダリな婚約者
「………初恋、だったのです」
ぽつぽつ、と自分の心の中を整理するように言葉を紡ぐ少女の姿に黙って話を聞く。
生徒会で一緒に仕事をするようになり、生真面目なところや穏やかで誰からも信頼されているところ、優しいところなど時間を過ごすうちにどんどん惹かれていったのだと。
困っているときにさりげなく手助けをしてくれて、でも自分でもできるところはしっかりと任せてくれて、自分を信頼してくれているのだと、自分は彼にとって特別なのだと思いたかったと。
例え相手に婚約者がいるのだと知っていても、その婚約者は何かの話題に挙がることもない、いわば影の薄い存在だったから一縷の望みを抱いてしまったのだと。
けれど期待と僅かばかりの傲慢さで渡した恋心を綴った手紙は受け取ってもらえなかった。婚約者がいるから、手紙も気持ちも受け取れないと言われたと。
「どうして、と思いましたわ。見目だって、家柄だって、才能だって、わたくしの方が優れているのに…わたくしの方が釣り合っているはずなのにって。ただ幼い時に婚約したからと、それだけでわたくしが選ばれないなんて狡いと思いましたわ」
「まぁ、そうですわねぇ」
「…………ここは怒るところだと思うのですけれど…?」
「でも事実ですものねぇ」