わたしのスパダリな婚約者



クスクスと笑う姿にきょとんとしていると後ろから名前を呼ばれる。おや、この声はと振り返るとそこには少し呼吸が乱れている婚約者の姿が。……運動でもしていたのかしら。



「まぁ、クリス様。どうかされました?」


「どうか、って……それは私の台詞だ」



はぁー、と大きく息を吐き出している姿にこれはかなり疲れているのではないだろうかとちょっと心配になってしまう。くしゃり、と自分の手で前髪を乱すところなんて普段の彼とも思えない余裕のなさそうな態度だ。


クリス様ってば完璧主義みたいなところがあるのだもの。自覚していないところで自分の負担になっていそうで怖いのよねぇ。



「では、わたくしはこれで失礼しますわ」


「あら。まぁ、少し遅い時間になってしまいましたが大丈夫かしら?」


「えぇ、ご心配ありがとうございます。………あの、またお声をかけてもよろしいですか?」


「もちろんですわ。今度は一緒に美味しいお菓子も食べましょうね」



はい、と嬉しそうにはにかむ表情にかわいいなぁとほのぼのしながらメルティ様を見送る。その時にクリス様に勝ち誇ったような笑みを向けていた気がするけれど……気のせいかしら。



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