わたしのスパダリな婚約者



ああ、でも失恋からは立ち直っているみたいでよかったと胸を撫で下ろす。恋敵であったわたしが言うのもなんだけど、こういうのを引きずるのも良くない気がするし……本当に、わたしに意地悪するわけでもなく仲良くしてくれるなんてメルティ様は良い子だわ。



「………………まさか、またか」


「?………また??」


「あぁ、いや、気にしなくていい。……本当に君は私に手を出させてくれないな」



ぼそり、とクリス様が何か言ったのかはわかったけれど内容がわからずに小首を傾げて見上げると苦笑して首を振られた。わたしが知らなくてもいいってことかしら。


そろそろ帰った方がいいのはわかっていたけれど疲れている様子の婚約者の姿に無理をさせてはいけないと先程までメルティ様の座っていた席を勧めてひとまず体を休めて頂くことにした。


新しく飲み物を頼んで、そういえばどうしてクリス様がここにいるのだろうと尋ねてみるとどうやら新生徒会の皆さんの相談に乗っている途中わたしとメルティ様が一緒にいることを聞いて慌てて来たらしい。……慌てて?


慌てることなど何ひとつない気がするのだが。あ、もしかしてわたしがメルティ様に何かすると不安がらせてしまったのかしら。




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