わたしのスパダリな婚約者
あらまぁ、と心がほんわりと柔らかく綻ぶ。あんなに可愛らしくて善良なメルティ様に限っては無用な心配だとは思うけれどそう思われていたのは素直に嬉しい。
「ふふ、ありがとうございます。けれどメルティ様はとても良い子でしたわよ?」
「良い子………?」
なんだか未知の言葉を聞かされたみたいな不可解な表情をする婚約者の姿にもう一度説明するがあまり納得できていないようだった。何故かしら。
「そういえば、どうしてクリス様はメルティ様の手紙を受け取らなかったのですか?あんなに愛らしい方から思いを寄せられるだなんて、嬉しかったでしょう?」
「………君の場合は、本当に、純粋に、そう思っているのだろうな」
「………嬉しくなかったのですか?」
まさかと思ってそう聞いてみるとはっきりとした返事はなかったもののあまり歓迎していなかったのは本当のことだったらしくちょっと衝撃だった。
わたしならあんなに可憐で可愛らしい子に好きだと言われたら気持ちがあるなしに関係なく嬉しくて舞い上がってしまいそうなのに。世の中の男性はほとんどがわたしと同じ意見だと思うけれど……
「君がいるのに、他の女性からそういう気持ちを向けられても困るだろう」
「………わたしがいるから、なのですか?」
つまりは婚約者のいる身で他の女性に思われても応えられないから、ということだろうか。なんと、わたしがクリス様の恋路の邪魔をしていたらしい。
「それは……申し訳ありません」
「………何か盛大に解釈違いされているのはわかった」