わたしのスパダリな婚約者



これはどういう反応をすればいいのかと本気で困惑していると小さく笑みをこぼしたクリス様が席をわたしの隣に移してその手を伸ばしてくる。


わたしのものより大きくて温かな手が髪を撫でて頬をくすぐる感覚を享受しながら、そういえば婚約者同士とは言えこんなにも近くで触れ合ったのは初めてだとそんなことに気づいた。


折に触れての手紙や贈り物を送り合って、クリス様のことは知っているつもりだったけれど、肌の温度や身にまとう香りなど、まだまだ知らないのとばかりなのだと当たり前のことを今さら再認識する。


すぐ目の前にこれでもかと綺麗な顔があってわたしの顔を見つめられているのだと思うと執着が込み上げてしまい頬が熱くなった。



「あの………」


「君と話をしていると、君は人の持つ悪感情をどこかに置いてきてしまったのではないかと思うよ」


「え、」



この状況に関してはスルーされるらしい。いやそれよりもクリス様、わたしを美化しすぎなのでは。



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