わたしのスパダリな婚約者
混乱真っ只中で目を白黒させるわたしの姿に満足したのか手のひらを差し出されて反射的に自分のものを乗せる。
「まぁ、つまりはそんな魅力あふれる愛する婚約者には頼られたいし、少しは嫉妬してほしいという私の我儘だ」
「……………………へ、」
今なんだか聞けるはずのない単語が耳に入ってきたぞと固まると、やや強引に乗せた手を引っ張られてそのまま流されるようにクリス様の腕の中に飛び込んでしまう。
ぐっと抱き寄せられた逞しい体に、あぁこの人は生きている男性なのだと今更なことを理解して体中に熱が走った。
「ひ、ひぇ、あ、あの、っ」
「君に相応しいと思えるように今も努力している私は、そろそろ報われてもいいと思わないか?」
うっとり、という言葉がまさにぴったりというような蕩けた表情を至近距離で魅せられて、わたしが早々に陥落させられたのはもう仕方がなかったことに違いない。