わたしのスパダリな婚約者
「そろそろ私の愛しい婚約者を返してくれないか」
「ク、クリス様…っ」
「あらあら、リーレのスパダリがご登場ですわ!」
「………スパダリ?」
不思議そうにする婚約者の姿にあわあわしているわたしをよそに、さっさとスパダリとは何かを説明してしまったシエタになんて知識を教えているのだと目眩がする。
お願いだからこれ以上変なことをクリス様の耳に入れないでほしい。優秀なだけあって我が婚約者様は応用力にも優れているのだ。
「………成る程。ならば私はリーレ限定のスパダリだな」
「……………ひゃあ」
誤魔化しようもなく真っ赤に染まった顔を隠すように手のひらで覆って下を向くわたしに、これ以上もないほどの愛の言葉が降ってくる。
それを幸福だと思いながら手加減してほしいと思ってしまうわたしは、これ以上もない幸せ者なのだろうなぁと手のひらの中で微笑んだ。
fin