あやかし学校
美術室で見たときは未完成で、幽霊の噂と相まってなんだか物々しさのある絵だったのが、今はキラキラと輝く青春のいちページのような絵になっている。


「そっか。先輩はこういう校舎を描きたかったんですね」


校舎は太陽の光に照らされて建物自体だ生き生きしているように見える。


生徒の姿は描かれていないが、学校で元気に授業を受ける楽しい笑い声が今にも聞こえてきそうだった。


先輩の絵に感動を覚えていると、今度は食欲を刺激する匂いがただよってきた。


そっちにいるのは料理人を目指した3人組だ。


1人は舌癌で夢を諦め、もう1人は他の夢を追いかけ始めた。


けれど3人共心のどこかでまだ当時のことを思っていて、それが生霊となって現れたもの。


彼らが持っていた包丁は色とりどりの野菜を刻み、魚をさばき、そして肉を焼いていた。


ジュージューと音を立てるコンロは幻のはずなのに、まるで現実のように熱気まで伝わってくる。


長いテーブルが出現したかと思えば白いテーブルクロスに白い皿が用意され、次々と料理が盛り付けられていく。
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