あやかし学校
「どけろ! 人間!」


テケテケの声がひときわ大きく、廊下中に響き渡る。


それは脳を揺らして痛みまで伴う凄まじい声だった。


だけど僕は両足でどうにかふんばってその場に留まり続けた。


傷ついた太ももはジクジクと痛むけれど、気が付かないふりをした。


「西村……どうしてそこまで?」


銀太の弱々しい声が聞こえてくる。


「お前達、あのとき助けたキツネだろ? 全然気が付かなくてごめんな」


それに対する返答はなかったけれど、僕はその沈黙を肯定と受け取った。


「お礼しにきてくれてありがとう。それに、僕みたいなヤツが助けて悪かったよな」


もっと普通の人がキツネを助けていれば、こんな厄介事に巻き込まれることだってなかったんだと思う。


「そんなことない!」


言ったのは金子だった。


「あのとき私、本当にもうダメだと思ったの。あの大木から落ちてきた雪はとても重たくて、自分の力じゃどうしようもなくて……。どれだけもがいても全然抜け出せないし、朝が来たことは匂いでわかったけれど、雪の中は真っ暗で冷たくて寂しくて……」
< 119 / 134 >

この作品をシェア

pagetop