あやかし学校
佳苗に会ったことで少しだけ気分が晴れたけれど、それも長くは続かない。


学校に近づけば近づくほどに気持ちは滅入っていってしまう。


「どうしたの? イジメ?」


こんな風にデリケートな問題を難なく口にするのは佳苗くらいなものだ。


だけど残念。


僕に降り掛かっている問題はイジメなんかじゃなかった。


ともすればもっとやっかいで、どうにもならない問題だ。


だけどそれを口に出すことははばかられて無言で歩く。


「まぁ、人生山あり谷ありだよ」


僕の沈黙をどう受け取ったのかわからないが、佳苗はそう言ってまた僕の背中を叩いた。


「叩くのやめてくれないか? 本気で痛いんだけど」


「女子の力で痛がってるようじゃダメダメだね」


さっきまでの僕と同じように大きくため息をついて、肩をすくめてみせる。


女子柔道をやっている佳苗の力が男子と同等くらいだということが喉からでかかったけれど、どうにか押し込めた。


「ったく」


仕方なく軽く舌打ちをするだけで終わったのだった。
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