あやかし学校
自分でも体が揺れていることに、はじめは気が付かなかったくらいだ。


曲は一番の盛り上がりを見せて、一気にラストへと向かう。


「よし、覚えた!」


一曲覚える事に体に爽快感が走る。


何度も何度も練習した曲は指先や体が自然と覚えてくれて、忘れることはない。


これで弾きたいと思ったときに楽譜なしで弾けるようになる。


「もう1度」


練習を始めると時間の経過が驚くほど早くて、気がつけば40分もひとりでピタノを弾いていた。


エリーゼのためにはもう完全に弾けるようになった。


あとは自分らしく弾けるようになるまで、また練習の繰り返しだ。



次に覚えたい曲もあるし、心がはずんでいるのが自分でもわかった。


「もう一回だけ練習したら帰ろうかな」


窓から差し込む日差しはオレンジ色に染まっていて、すでに校舎内からはなんの物音もしなくなっている。


そこで今日が集団下校の日だとようやく思い出した。


学校内に残っているのは先生と僕くらいかもしれない。


早く帰らないと怒られるかも。
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