あやかし学校
筆もなく、絵の具も出ていないのにカンバスの絵がどんどん描き足されていく。


「うわぁ!!」


祐太郎が叫ぶと同時に部室から逃げ出していた。


「待って!」


とっさに叫んで手を伸ばすけれど、届かない。


僕は完全に金縛りにあい、足が動かなくなっていた。


ざっざっざっ。


ざっざっざっ。


大胆な筆の音。


描き足されているのは太陽の光だ。


決して怖い絵ではないのに、その中にいまにも人の顔が、死んだ、石田彩花先輩の顔が浮かんできそうで呼吸が乱れた。


もうこれ以上見ていたくないと思うのに、どうしてか視線をそらすこともできない。
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