あやかし学校
「よし、わかった。3人分の名前を呼ぶ必要がないなら簡単だな」


銀太はすぐに気を取り直してひょうたんを飛び回る包丁へ向けた。


「まぁ、確かにね」


金子は名前を呼ぶのが嫌なのか、複雑な表情をしている。


が、名前を呼ばないことには怪異は収まらない。


やるしかないのだ。


金子は大きく息を吸い込んで、そして銀太を見た。


銀太は小さく頷く。


「銀杏シェフスリーさん!」


ふたりの声が合わさると幾重に重なって響いて聞こえる。


体の奥まで揺さぶるような感覚に強く身震いをしたとき、包丁がいとも簡単にひょうたんの中へと吸い込まれていった。


「これでOK」


最後に銀太が栓をすればおしまいだ。


家庭科室の中にはみんなが逃げ出すときに倒された椅子と、作りかけの料理だけが残されている。
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