あやかし学校
銀杏シェフスリーも、もう1度料理をしたかったのかもしれない。


先生の話を聞いた後だからか、なんだか切ない気持ちになってしまう。


思えば今までの怪異たちも決して悪い奴らではなかったんだ。


最初に会ったのは幸福を呼ぶ座敷わらしだったし、次に会ったのは絵を完成させたい先輩だった。


そんな怪異たちがどんどんひょうたんに吸い込まれているのを見るのが、なんだか辛くなってきていた。


「どうした?」


教室へ戻ろうとしていた銀太に声をかけられて僕は左右に首をふる。


きっと、今みたいなことを言うと笑われてしまう。


怪異に心を寄せるなんてどうかしていると。


僕自身怪異にはずっと悩まされてきたのに、何を言っているんだと怒られるかもしれない。


実際、少しずつ怪異が少なくなっているおかげで、最近の僕は体調がいい。


それなのに、怪異がかわいそうだなんて言えなかった。


「なんでもない。行こう」


僕は家庭科室から視線を外して、廊下へでたのだった。
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