【短編】トモウタ。
止まったピアノの音に、なんだか急に過去から今へ引き戻された気分になった。

「祐輔」
「ん?」
「俺変わったかな」

何もできなかったあの頃。
多分、俺は将来の希望と少しの不安で、明日がくるのが楽しみで仕方なかった。


なのに今はこんなにも明日がくるのが怖い。

「どうだろ」

あいまいな祐輔の返事に俺は口火を切った。

「俺、つまんない奴になったかも」

「うん」

「毎日毎日仕事ばっかで」

「うん」

「全然彼女とか家族に構えなくて」

「うん」

「彼女が妊娠したのも、流産したのも、俺気付かなかったんだ」

「…うん」

今の職場の同期にも、よくつるむ友人にも秘密にしていたことを、俺は思わず祐輔にぶちまけた。


「和也はさ、やっぱり変わってないよ」
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