曖昧な関係のまま生涯告白などすることのない恋心
私は、ただ見た目の華やかな世界に憧れただけなんだろうか?
誰にも言わずに中学時代から女優になることを決めていた。そのために独学で発声からストレッチ出来ることはして来た。
それでも人間として女としてのプライドを捨ててまで、夢に縋り付こうとは思わない。思えなかった。
すべてがそうだとは言わない。良識のある人だって、きっとたくさん居るんだろう。
でも……。今夜のことで私の将来は絶たれた。
タクシーを拾って走り出したら涙が止まらなかった。
私が目指したのは、こんな汚れた世界なの?
その時なぜか亮君の顔が浮かんだ。
子供の頃、一緒に遊んだ亮君の笑顔が……。
近過ぎたのね。きっと。手を伸ばせば届くと思っていた。
手を伸ばそうともしなかったのに、あの頃の私は……。
後悔? してないと言えば嘘になるのかもしれない。
好きだという気持ちを心の中に仕舞い込んで……。
夢を叶えること以外は、すべて犠牲にした。恋愛も友人との付き合いも。
それでも孤独だなんて思わなかった。
夢があったから、それしか考えていなかった。