素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 ようやく涙越しではなく、目を閉じた彼の顔をきちんとその目に映すことができるまで、どれだけの時間が経ったのだろうか。

 部屋のどこかにあるだろう時計を見る気力も沸かないし、時間感覚などとうになくなってしまっていた。

 そして、今のアリスにはそんなことはもうどうでも良かった。目の前の彼がその目を開けてくれることを、ただ一心に願っていた。

「……ゴトフリー」

 ぽつりと名前を呼んだひどくかすれた声が、自分のものではないような気がして、なんだか、嫌だった。そして、その呼びかけに返事が返ってくることがないことが。

 柔らかな蜂蜜色の髪をそっと触って、閉じられた瞼にそっとキスをした。そんなことをしたって、彼が目覚めることはないのはわかっていた。それでも。

 眠っていて意識のない彼の耳元に唇を寄せて、今なら素直になれる気がして、アリスは消え入るような声で囁いた。

「あのね、私、ほんとはね、ゴトフリーのこと、ずっとずっと前から知ってたんだよ」

「ゴトフリーの書く書類の文字がすごく綺麗だったから、名前を見てこの人はどんな人なんだろうって、気になってたの」
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