【書籍化】素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる【コミカライズ】
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「ここかぁ」

 アリスは、そう呟いてその崖を見下ろした。

 ゴトフリーを目覚めさせる薬の原料となるその薬草の一つは近くの森の中にある崖の下にあるらしい。今回は以前のように考えなく来ている訳ではなくて、きちんと魔物除けの護符も持ってきているし、もしもの時のために、高額だけれど攻撃魔法を封じている魔法具も持ってきている。護衛の冒険者を頼むことを考えたのだが、依頼するための時間が要ると言われて、今日は断念したのだ。

 崖、とは言っても底の見えない切り立った崖ではない。その下の沢に降りるための段差もあるし、降りるために誰かが使ったのだろう鎖で出来ているロープも下まで届くように吊るされていた。

 気をつけて降りればそう怪我することはないと、アリスは判断した。緊張しながら鎖を握ると、体重移動させようとしたその時だ。

「……きゃっ」

 ロープを繋いでいた金具が弱っていたのか、嫌な音がして壊れてしまった。ふわっとした浮遊感が体全体にして、このまま落ちる。そう思った。ぎゅっと目を瞑って来るべき衝撃に備えた。

 やがて聞こえてきたのは、キュルキュルと心配そうに鳴く声と、誰かに腰にがっしりと腕を回されている感覚。

(ああ、またアレック?)
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