【書籍化】素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる【コミカライズ】
 ぽろりとまたこぼれた涙をゴトフリーは唇で吸ってくれた。

「……眠っていた時、アリスの声が聞こえていたんだ……早く返事したかったよ。君が待っているとそう思うと限りなく続く暗闇の中でも、何も怖くなかったんだ。俺が帰る場所は絶対あると信じていた……愛してるよ。アリス」

 そう言うとゴトフリーは優しく唇にキスをしてくれた。アリスはその顔を見上げて、何も言葉を発することが出来なかった。じっとその目は愛しそうに自分を見てくれているのに。

「……ん。じゃあ、そろそろ帰ろうか。落ちかけたし、怖かったよな。下にも荷物を取りに行く?」

 ゴトフリーはさっき落ちかけた崖の上に視線を移して、アリスの向きを変えるために抱き上げようと大きな手を、腰に当てようとした。

「ちょ、ちょっと待って、ゴトフリー」

 自分の動きを制止する声に、ゴトフリーは不思議そうな顔でアリスを見た。

(言わなきゃ、今言わなきゃ、どんどん言えなくなっちゃう)

 そう思うのに、そう思うほど言葉が出てこない。どうしても、言葉が出てこなくて、また緊張感が張り詰めて来た。また失敗してしまうかもと思うと、怖くてたまらない。
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