素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 アリスは以前に助けてもらったあの銀髪の美青年を思い浮かべた。ブレンダンもあの時軽口を叩きながらもかなりの緊張感を持っていたから、仕事上はすごく厳しい人なのかもしれない。

「うん。でも、まあこれは仕方ないことなんだけど、俺たちの仕事ってひとつミスしたら仲間が怪我したり、最悪死んだりもするかもしれない。だから、団長は細かい事にも厳しいんだよ。新人も配属されてそろそろ一年経つから、すこし余裕が出てきてミスが目立つ頃だから」

 アリスは確かに、と頷いた。自分の関わっている経理の仕事もそうなのだけど、「自分はもうこの仕事が出来る」と思い込んでしまうと、途端にミスが増えるのだ。そういう時期に気を引き締めるように指導するのは上司の仕事の内なのだろう。

「でもね、私、ゴトフリーを待ってるの、楽しかったんだ。来てくれたら何言おうかなとか、そんなこと考えてると、全然待ってる感じしなかったよ」

 ゴトフリーは歩きながらアリスの顔を覗き込むと、口を押さえて息をついた。

「はー、俺のアリスが可愛すぎて身が持たないな。お願いだから、可愛いのは俺の前でだけにして」
< 124 / 292 >

この作品をシェア

pagetop