素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
「私のこと可愛いって言ってくれるの、ゴトフリーだけだから大丈夫だよ」

 ふふっと笑いながら言ったその言葉にゴトフリーはちょっと複雑そうな顔をした。何か言いたいような言いたくないような、不思議な顔をしている。そんな彼の様子にアリスは首を傾げた。

 出来るだけゆっくり歩いたつもりなのに、二人で話しながら歩くと、すぐに家に着いてしまった。生まれて初めて帰り道がもっともっと遠かったら良かったのになって思ってしまった。

「……あのね、家に、寄ってく?」

 集合住宅の前でアリスは勇気を出してそう言った。

「……ごめん、アリス。明日早いからまた今度寄ってく。好きだよ」

 そう言って帰り際、素敵なキスをくれたのに、自分の部屋に入ったアリスはなんとも不満だった。

 付き合ってから、いつまで経ってもゴトフリーは、そういうことをしない。してくれない。どうしたら、そういう気分になるのだろうか。どうやって誘ったら乗ってきてくれるのだろうか。

 学校の授業では、そんなことを教えてくれなかったし、何もかも経験不足のアリスには付き合ったばかりのゴトフリーの気持ちがどうしても、読めなかったのだ。

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