素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 近くにあった柔らかい布を差し出した彼に、アリスはさらりとした黒髪を揺らしてふるふると首を振った。

「もう飲んじゃった。それに、こういう時は飲むものだって聞いたことが……」

「……それ誰情報? リリアじゃなくて、もし男だったら絶対ぶっ殺す」

 誰だっけ、と首を捻ったアリスを優しく抱きしめてゴトフリーはしみじみと言った。

「もう、良い? バカな俺をいじめてすこしでも気がすんでくれた? ……これは言わなかった俺のせいなんだけど、そういう事を今までしなかったのは、恋人になって最初のセックスだったから、大事にしたくて色々考えて準備していたんだ。もうすぐ二人の休みが被るから、その前の日にアリスが好きそうなかわいい宿屋を予約してたんだ。驚いて喜ぶ顔が見たくて、こんな事になってごめんね」

 パッと顔を上げたアリスは嬉しそうに微笑んだ。やっぱりちょっとやきもち妬きなところも含めてゴトフリーは自分にとっての理想的な彼氏だとそう思った。

「ほんと!? すごく嬉しい。ゴトフリー、ありがとう」

 目を輝かせたアリスの顔を見てゴトフリーは複雑そうな表情をして言った。
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