素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 その事実に苦笑しつつ、目的の本があるだろう本棚の前に辿り着いてじっと背表紙を見つめつつ、題名の頭文字を順番に読んでいく。専門書なので、背表紙は分厚いはずだ。

(あ、あった)

 その本は、ちょっと高めの位置にあったけれど、背伸びして手を伸ばせば、用意されている踏み台を持ってくるまではなさそうだ。目一杯手を伸ばしてその本を取ろうと苦戦している時、頭のすぐ後ろでくすっと笑う声が聞こえて、大きな手がアリスの手に重なった。そして、本を書棚から抜き取るとその登場に驚いているアリスに手渡した。

「……ここは俺に恋に落ちる場面だよ。アリス」

 もうとうの昔に恋に落ちてしまっているその人の顔を見上げて、アリスは微笑んだ。今は職務上身につけている黒い竜騎士服ではなくて、私服の水色のシャツを着ている。その淡い色味は優しげな可愛らしい顔によく似合う。

「ゴトフリー。今日はもう帰ったんじゃなかったの?」
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