素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
「……ごめん。アリスにそうしてもらうために俺は今まで頑張ってたのかなって、そう感慨深く思っていたとこ。後でいっぱい抱いてあげるから、もうちょっと我慢して」

 そう言うと、ゴトフリーは櫛を片手にアリスの黒髪を隅々までさらさらにして満足そうだ。

「良いよ。アリス。先にベッドに行ってて。俺はここを片付けてから行くから」

 アリスは棚から新しく出した大きな布を体に巻きつけると、荷物片手に部屋に戻った。大きなバッグの中から今日ゴトフリーに渡したいと思っていたものを取り出す。チャリと微かな金属音がしたそれは、アリスの家の合鍵だった。勤番があり、不規則な勤務が続く竜騎士である彼と過ごすのは双方共に仕事を持っているとなかなか機会が合わない。だから、もし時間が合う時があれば、自分の家で待っていてくれたら良いなって思っていたのだ。

「……アリス?」

 脱衣所の方から歩いてくる、腰にだけ布を巻いたゴトフリーにその鍵を見せた。彼は驚きつつも、嬉しそうにしてくれる。

「家の合鍵くれるの?」

「うん。両方とも仕事してるから、なかなか時間合わないし私の家で待っててくれたら嬉しいなって思ったの」
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