【書籍化】素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる【コミカライズ】
 大方の皆の予想では選ばれるはずだったブレンダンと呼ばれた爽やかで甘いマスクのその人は、何も言わずに面白そうに笑う。きっと初見で短時間の勝負ならその人がきっと選ばれることが多いのだろう。

 でも人の好みなんて千差万別で肉が好きな人も居れば、芋が好きな物好きな人ももちろん居る。多数派が居るということは必ず少数派も存在する。だから、多数の人が選ぶブレンダンじゃなくてゴトフリーを選んだアリスは少数派なのかもしれない。

 でも、アリスはゴトフリーが良いと思ったんだからしょうがない。

(ブレンダンさん、初見じゃなくて、ごめんね)

 アリスは心の中で舌を出した。さっきこの人たち五人と話し始めた時、はじめましてと言ったけど、それは嘘だった。

 彼等は竜騎士である身分を示す黒い騎士服ではなく、私服だからと油断しているのかもしれないが、自分の隣に居るブレンダン・ガーディナーはこの国では知らぬ人がいない英雄の相棒だし、一人につき数の限られた竜が居る少数精鋭の竜騎士となれば、城で仕事している者なら顔と名前くらいは一致する。
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