素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
◇◆◇

 日が暮れてしまう前に住んでいる集合住宅までゴトフリーに送ってもらったアリスは自分の部屋のドアを開けて、なんだか、違和感を感じた。いつもと何か空気が違うようなそんな気がしたのだ。首を傾げながら持っていた荷物をテーブルの上に置く。

 窓から薄紫の光がぼんやりと差し込む暗い部屋の中、灯りをつけようとした時に後ろから、誰かに抱きつかれてその出来事のあまりの衝撃に頭が真っ白になる。この集合住宅はかなりセキュリティはしっかりしているし、まさかこの場所でこんな事があるなんて予想をしていなかった。

 突然、視界が暗闇に染まる。鼻の前にきつい薬品の匂いがして、くらりと意識が遠のいていく数瞬の間、必死で思った。

(ゴトフリー! アレック……アレック! 助けて……)

 あの不思議な生き物は、人の心の中を言葉を聞くことが出来る。以前ゴトフリーが言っていたように名前を思い浮かべただけで届くなら、これで届くはず。アレックに伝われば、ゴトフリーはきっと自分を助けに来てくれる。

 ……きっと、きっと。
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