素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 横向きの姿勢になりじっと見つめて、その可愛らしい紅茶色の目を細めた。万が一の事態に備えて、その細い腰に腕を回した。

「……大きな商隊だから、きっといろんなところに行ってるんじゃないかな。世界中を回ったりする商人も珍しくないらしいよ」

「すごいねえ……いろんな人生があるんだなぁ……」

 しみじみと言った彼女の顔は微笑んでいる。その普段は見ることの出来ない光景を、目に焼き付けるようにじっと見入っていた。

「うん、アリスみたいな文官の人生もあるみたいにね」

「ゴトフリーみたいに竜騎士の人生もあるものね。不思議だな……あの人達にはもうこの先会うことはないかもしれないけれど、今ここで同じ場所にいるのは確かだもんね」

 アリスは頭が良すぎるせいか、たまによく分からない事で感動したりする。変なことで悩んでいたり、自分には理解出来ないことをすごく気にしたりすることもある。

 そういうところを全部合わせても、可愛いことには変わりないんだが。

「ん、アリス、だいぶ飛んだしそろそろ眠くない? 宿屋に帰ろうか。もう満足出来た?」
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