素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 頃合いを見計らって下心一杯の提案をした。サルータの王都で何日か滞在する用に取ってある宿屋は最上級のクラスだから、今夜寝るだけにしか使わないのはちょっと勿体無い気もしてしまう。

 貧乏性だと言うなかれ、本当に豪華で女の子の喜びそうな大きなベッドだし、真面目で可愛い恋人であるアリスは結婚するまでは一緒に暮らさないと言っているから、こうやって珍しく何日間か一緒に居る時間をすこしでも無駄にはしたくなかった。

 アリスは振り向いてふわっとした表情で笑うと頷いた。

「ゴトフリー、サルータに連れて来てくれてありがとう。砂漠って本当に本に書いてあった通りの光景で、すごく感動した」

「どういたしまして。いつでも連れて来てあげるよ。アリスがそう、望むならね」

 その時、ふわっと白いものがいくつもいくつも落ちて来て、二人は顔を見合わせた。

「……雪?」

 アリスはその落ちてきたものに手のひらを差し出して、本当に驚いているようだ。昼は灼熱の砂漠の夜に雪が降るなんて、なんて神秘的な光景なんだろう。

「そうみたいだね、今夜は冷えるなと思っていたけど、雪が降るなんて思わなかったな」
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