素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
◇◆◇

「はい。アリスさんこれよろしく」

 アリスの居る窓口に書類を差し出したのは、この前飲み屋で会ったレオ・オーウェンだ。眼鏡をかけて知的な雰囲気を持つ竜騎士の彼は女性の文官達の中でも人気があるから、背中に視線が集まるのを感じる。

 ゴトフリー以外の竜騎士が来るのはなんだか久しぶりな気がしてアリスは、職務上の愛想笑いじゃない笑顔を見せた。

「こんにちは、オーウェンさん」

「レオで良いよ。あの夜ぶりだね」

 眩しそうな笑顔を返してくれる彼は、ゴトフリーにどこまで聞いているのだろうか。男性同士ってこういうことをどこまであけすけに、言い合うものなのだろうか。

 そのアリスの複雑な気持ちを言い当てるようにレオは言った。

「ゴトフリーは君と帰ったあの夜のこと、何度聞いても何も口を割らないんだ。ただ休み明けに出勤したと思ったら、同僚の前で君のことを誰にも取られたくないと公言して、君のところに持って行けそうな事務書類を集めては、せっせとここに通ってきているという訳」

 その言葉を聞いてアリスはなんだかむずがゆい気持ちになった。彼が自分を誰にも取られたくないって言ってくれているのを知って、やっぱりすごく嬉しかったからだ。

 そんな気持ちをレオに悟られたくなくて、アリスはわざとツンと澄まして言った。

「私は私のものです。元々誰のものでもないですよ」

「ああ、ごめん、そういう意味じゃないんだけど……まぁもちろんここで働けるくらい聡明な君は分かってて言ってるんだろうな」

 レオは面白そうに顎を触った。
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