素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
◇◆◇
アリスは泣きそうになっていた。
銀行に渡す書類を持って午後の配達便を頼もうと通信室のところまで行こうとしたら、体の大きな浅黒い肌の男性にいきなり肩を掴まれて、訳の分からない外国語で強い調子でまくし立てられはじめたのだ。
(訛りも強くて、なんて言ってるか本当に分からない。何処の言葉なんだろう)
その外見から察するに間違いなく、異国の人だ。今大陸から来ているというアイザスの使節団の一人だろうか。
「ちょ、ちょっと、あのごめんなさい。言葉わからないです」
アリスが習得している近くの国の言葉を話してはみたが、知っているかぎり片言で言っても全然通じない。どうしようどうしようと周囲に視線をさまよわせるけど、こんな時に限って誰も通らない。そして廊下には必ず一人は衛兵が配置されているはずなのに何かの用事を片付けているのか、いない。何もかもタイミングが悪すぎた。
どんどんその人の言葉の調子はきつくなるばかりで、持っていた書類を抱きしめて溜まっていた涙をこぼしそうになった。その時に大きな黒い背中がアリスを守るように立ちはだかった。その見覚えのある蜂蜜色の髪を見てアリスはほっと息をつく。
ゴトフリーだ。
彼の独特な優しい低い声で、異国の言葉が紡ぎ出されるのを不思議な気持ちで聞き入った。そして浅黒い肌を持つ異国の人は、彼の言葉に頭を下げると慌てて走って行ってしまった。
アリスは泣きそうになっていた。
銀行に渡す書類を持って午後の配達便を頼もうと通信室のところまで行こうとしたら、体の大きな浅黒い肌の男性にいきなり肩を掴まれて、訳の分からない外国語で強い調子でまくし立てられはじめたのだ。
(訛りも強くて、なんて言ってるか本当に分からない。何処の言葉なんだろう)
その外見から察するに間違いなく、異国の人だ。今大陸から来ているというアイザスの使節団の一人だろうか。
「ちょ、ちょっと、あのごめんなさい。言葉わからないです」
アリスが習得している近くの国の言葉を話してはみたが、知っているかぎり片言で言っても全然通じない。どうしようどうしようと周囲に視線をさまよわせるけど、こんな時に限って誰も通らない。そして廊下には必ず一人は衛兵が配置されているはずなのに何かの用事を片付けているのか、いない。何もかもタイミングが悪すぎた。
どんどんその人の言葉の調子はきつくなるばかりで、持っていた書類を抱きしめて溜まっていた涙をこぼしそうになった。その時に大きな黒い背中がアリスを守るように立ちはだかった。その見覚えのある蜂蜜色の髪を見てアリスはほっと息をつく。
ゴトフリーだ。
彼の独特な優しい低い声で、異国の言葉が紡ぎ出されるのを不思議な気持ちで聞き入った。そして浅黒い肌を持つ異国の人は、彼の言葉に頭を下げると慌てて走って行ってしまった。