素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 今の今までもちろん触ったことなどないし、今日アレックに会うことはいきなり決まったから、竜の情報も何も調べていなかった。顔に抱きつくのは竜にとってタブーの行為だったのかとアリスは慌てた。

「……違うけど。アレックは雄だ」

「え?」

 ゴトフリーの思いもよらぬ言葉に、ぽかんとしたアリスに彼は言いにくそうに呟いた。

「俺の前で抱きつかないで。俺の前じゃなくてもダメだけど」

 その言葉が彼の嫉妬によるものだと理解するのまで時間がかかったアリスはじわっと熱を持った頬を隠すように手袋をした両手を顔に当てた。

「……えっと、その、だって竜だし、アレックはゴトフリーの相棒でしょう?」

 ゴトフリーは先程帰した馬車から降ろした荷物を手早く慣れた手つきで鞍にくくりつけると、アリスを片腕で軽々と抱き上げながらアレックに乗った。

「そうだな、でも理屈じゃないんだ。ごめん」

 鞍に乗せられて彼の前に同じ方向を向いて座ってしまっていたから、それを言ったゴトフリーの表情を見ることは出来なかった。アレックはすこし振り返って二人が腰を落ち着けたのを確認すると、大きな羽根を広げて晴れた冬の空へと飛び立った。
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