素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 リリアは現実主義だし計算上手の、いわゆる何でも上手くやる女だ。それに比べて自分は……と思うとアリスはじわっと涙が出そうになった。いつも良いなと思う人の前では素直になれないし、自分から何となくそういう方向に話を持って行って向こうから誘ってもらうなんてもっての外だ。そんなことが出来るなら生きてきた年齢が彼氏いない歴とかになっていないし、何ならお酒の力を借りないと親友に愚痴も言えない。つらい。生きるのつらい。

「あー、独身の良い男どこかに転がってないかな」

 アリスのしみじみした声はちょうど他の人たちの会話の隙間だったのか、思いのほかその狭い店内に響いた。

「……ぶっ」

 隣のテーブルで飲んでいた男性五人組の中の一人が吹き出した。さっきお店に背の高い体の大きな人たちが入ってきたなと思っていたけど、リリアに愚痴るので必死でアリスは気にも留めていなかった。

「おい、ナイジェル。失礼だろ」

「ごめんね、君達の話の邪魔をするつもりはなかったんだけど」

 思わず目を向けたアリスはその謝ってきた人を見て、驚いて目を見開いたし、リリアは彼等にそつなくにっこり笑いながらアリスに耳打ちをした。
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