素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
「嘘、ブレンダン・ガーディナーじゃない。ここに居るの五人とも竜騎士よ」

 それはもちろんアリスだって知っている。一番近くにいて整った容貌の眉を下げて申し訳なさそうな表情をしている人は、名声と女性受けのするその外見でこの国でも有名なのだ。

 竜騎士といえばこの国ヴェリエフェンディの誇る最強の竜騎士団の一員だ。幼い頃から騎士学校で篩にかけられ非常に高い競争率を勝ち抜いた上に、最終的には数少ない竜に選ばれなければなれない。その俸給はとても高いし、竜騎士というのはこの国でも名誉ある職で、いわゆる独身女性の望む結婚相手の最高峰とも言えるだろう。

「お姉さん可愛いのに彼氏いないの?」

 興味津々な声をかけてくるのは、筋骨隆々の大きな体をしたエディ・ベイトマンだ。経費の期日破りの常習犯でアリスは、仕事上良くお世話している。その体に半分隠れている人を見つけたアリスは判断力の鈍った頭で必死に考えた。

(これってもしかしてチャンス?)

 窓口業務で培った笑顔を浮かべると、普段の自分では考えられない一世一代の勝負を開始した。

「はじめまして、アリスです。実は今日失恋したばっかりで」
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