素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
◇◆◇

 いきなり血相を変えて自分の持ち場に現れたアリスに動じることなく、偶然その場に居た自分の上司である女官長に冷静に早目の休憩を申し出たリリアは、アリスを連れてガランとした食堂の隅に座り、また黙ったまま、とりとめのないアリスの言い分を聞いてくれた。

「別れた元カノって言っても、会ったら普通に話すことくらいあるんじゃないの」

「でもっ……でも、隣に座ってすごく楽しそうにしてたんだよ」

 言い募るアリスを見てリリアは片眉を上げた。

「アリスがそう望んだんでしょ。自分とお付き合いしたいっていう男性を袖にし続けているのはアリスよ。今アリスは元カノともう親しく話さないでっていう権利もないんだから、不満に思っても何も言うことは出来ないわね」

 そんなことはアリス自身、一番良くわかっていた。あの光景を見てすごく嫌な気持ちだったけれど、それを何の約束も交わしていないゴトフリーにぶつける権利はないとわかるくらいには分別はついていた。

「……ゴトフリーがあの子とまた付き合ったらどうしよう」
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