素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

11 お弁当

 自分の持ち場へと帰っていくリリアに手を振って、アリスは自分の仕事場への道を歩き始めた。

「……アリス!」

 後ろから良く知っている低い声がして、振り向くと、ゴトフリーが走って自分の元までやってきた。

「アリスがさっき来てたって聞いて……えっと、ごめん。その、ナイジェルからエディがアリスになんかまた余計なこと言ったって聞いて……」

 口に手を当てて言いにくそうにするゴトフリーはどうやってアリスに説明しようかと思いあぐねているようだ。

 自分たちの関係の危うさはアリスも良くわかっていた。何の約束もしてないし、縛り合うような関係性でもない。ましてや彼が誰と楽しくお話をしていようが、それは彼の勝手だしアリスはとやかく言えない。

 廊下に立ったままのひとしきりの沈黙の後、アリスはずっと思っていたことを彼に伝えたくて勇気を出した。

「……えっとね、あのね。その……お弁当なんだけど」

 ちいさな声の発言に何を言い出したのかと、ゴトフリーは首を傾げた。

「あ、うん。そうなんだ、俺昼飯はいつも弁当で」

「その、えっとね……」
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