素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 もしかしたらゴトフリーの方が料理が上手い可能性もあるのではないかと、落ち込んだ。アリスは学生時代は勉強ばかりしていたし、就職してから家を出たから、母親にそこまで詳しく教わった記憶はない。仕事で遅くなると外食も多いし、自炊はたまにやる程度で自己流で何となく自分の好物が作れるレベルでしかない。

「あのね、そりゃお金を出してお店で食えば凝った料理が食べられるんだと思う。でも俺にはアリスの作った料理が一番美味しく思えると思うよ。だから無理がない程度に作ってくれたら嬉しい」

 その優しい言葉にこくんと頷きながら、そういえば大事なことを忘れていたアリスはしゅんと肩を落とした。

「あ、でもね、来週から当分の間は、お弁当作れないかも」

 突然トーンの変わった声にゴトフリーは首を傾げる。

「ん、何かあるの?」

「あのね、年度末だから、年に一回だけこの時期だけはすごく忙しくなるの。泊まり込み作業とかも増えるし、休日返上だから、その、ゴトフリーにもあんまり会えないと思う」

 自分が言い出した癖にと、落ち込みつつ話したアリスにゴトフリーはぽんぽんと頭を叩いて微笑んだ。

「仕方ないよ、仕事だもんな……俺ちゃんと我慢出来るから、また落ち着いたらアレックと一緒に遊びに行こう?」

 素敵な騎士に跪かれているから、何だか自分が物語の中のお姫様になれた気もして、頷きながら自然に笑みがこぼれた。
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