殺すように、愛して。
「ごめん、鳴海。本当に、ごめん」

 何が、とは言わなかった。頭を下げ、彼に続いた二人も、何が、とは言わずに謝罪した。一体何がごめんなのか分からないほど俺も鈍感ではないし、察しているのに何のことかと惚けたところで虚しいだけのように感じて。俺が勝手に発情しただけだから、みんなは悪くないよ、と本当のことを吐露した。寧ろ俺の方がごめん。

 俺も彼らも、運が悪かっだだけ。タイミングが最悪だっただけ。俺が無自覚に発してしまっていたフェロモンが彼らを誘惑してしまっただけ。それだけ。犯すという確実な意志を持ってオメガと接触を図ったわけではないことは理解しているから、彼らを責めるつもりは微塵もなかった。当時のことを思い返して見ても、心臓が痛んで騒つくほど恐怖を感じたのは確かだが、だからといって彼らを悪者にして被害者面はしたくない。彼らは何も悪くない。彼らに非はない。きっと、ない。ないのに。

「悪くなくない。あの時、黛が、彼奴が来て、無慈悲でも、思い出しただけで屈辱的だけど、強制的に止めてくれたから未遂で済んだだけで、もし彼奴も誰も来なかったら、俺らはあのまま鳴海のことを追い詰めてた。そうなってたら、悪くないなんて言えないだろ」

「そうだよ。鳴海が謝る必要ない。オメガが誰か興味があって、知りたくて、その好奇心に負けたのは俺らの方なんだから。自分が全部悪いのに、フェロモンのせいにした。鳴海のせいにしたんだよ」

「鳴海は、被害者じゃない? 俺らに襲われかけた上に、後で来た黛に、首、絞められてたし、下も触られて、鳴海、そのまま、気絶したじゃん……」
< 111 / 301 >

この作品をシェア

pagetop