殺すように、愛して。
自分の方が悪いと思う俺を口々にフォローする彼らは、向き合うためであったとしても、話をすることで当時の記憶が鮮明に蘇ってしまったのか、また気まずさを感じるように声を萎ませた。かくいう俺も、彼らの前で首を絞められ、醜態を晒して気を失ってしまったことは嫌でも覚えているため、羞恥や不甲斐なさが沸々と湧き上がり、上手く返答ができなかった。
同じ空間で呼吸をして、揃って、だんまり。揃って、黛が頭の片隅にいる。彼らの頭の中を覗き見ることなんてできやしないが、そんな気がしてならなかった。甚振られながらも劣情に抗えなかった俺と、過剰に甚振られて戦意喪失した彼ら。どちらの事象も黛によるものだった。
「……あの、さ、鳴海」
重く冷たく感じる空気を揺らし、絞り出された声は、俺を気にかけてくれているようで。唇を引き結んだまま小首を傾げて促せば、俺のリアクションを窺うように、恐る恐る、その、黛のことなんだけど、と続けられる。不穏だった。平穏ではなかった。だから、悪い知らせであることを瞬時に察してしまった。鼻から短く息を吸って、身構える。身構えて、彼の言葉に耳を傾ける。背中がざわざわしていた。
「……黛、彼奴さ、鳴海が休んでる間、ずっと、鳴海の席で授業受けてたんだよ」
「え……」
掠れた、乾いた、そんな声が漏れ、やおら彼らのすぐ側にある自分の席に目を向けた。何の変哲もない席。それでも、あそこに、黛が、座って、授業を、受けた。俺が、いない間、黛は、ずっと、俺の、席で、授業を、受けた。何も、知らないで、今日、俺は、そこで、その席で、授業を、受けた。俺は、休んでも、俺の席に、休みはなかった。
同じ空間で呼吸をして、揃って、だんまり。揃って、黛が頭の片隅にいる。彼らの頭の中を覗き見ることなんてできやしないが、そんな気がしてならなかった。甚振られながらも劣情に抗えなかった俺と、過剰に甚振られて戦意喪失した彼ら。どちらの事象も黛によるものだった。
「……あの、さ、鳴海」
重く冷たく感じる空気を揺らし、絞り出された声は、俺を気にかけてくれているようで。唇を引き結んだまま小首を傾げて促せば、俺のリアクションを窺うように、恐る恐る、その、黛のことなんだけど、と続けられる。不穏だった。平穏ではなかった。だから、悪い知らせであることを瞬時に察してしまった。鼻から短く息を吸って、身構える。身構えて、彼の言葉に耳を傾ける。背中がざわざわしていた。
「……黛、彼奴さ、鳴海が休んでる間、ずっと、鳴海の席で授業受けてたんだよ」
「え……」
掠れた、乾いた、そんな声が漏れ、やおら彼らのすぐ側にある自分の席に目を向けた。何の変哲もない席。それでも、あそこに、黛が、座って、授業を、受けた。俺が、いない間、黛は、ずっと、俺の、席で、授業を、受けた。何も、知らないで、今日、俺は、そこで、その席で、授業を、受けた。俺は、休んでも、俺の席に、休みはなかった。